より効率的で進化を続ける小売業のレジ。
「自動計算」や「無人販売」といったデジタルレジが普及していますが、いま話題となっているのがオランダのスーパー「Jumbo(ユンボ)」にあるレジ。
効率的とは真逆で「物凄く回転率が悪い」ことが取り柄なのです。
わざわざ効率が悪いレジに並ぶ人はいるの??と思うところですが、ここにあえて並ぶ理由があったのです。
それは…
このレジが「世間話をするため」の装置だから。
レジの狙いは??

200以上の店舗に導入された「世間話専用レジ」では、会計をしている間、店員と客がのんびり世間話をしながら過ごすためのレジ。
清算を行う短い時間ながらも、人同士の交流を生み出し、少しでも孤独を解消しようというのがこのレジの狙い。
社会問題への取り組みをブランド力にしている「Jumbo」。
1979年創業と比較的歴史の浅い企業ながら、理念は「孤独撲滅」と「持続可能性」、「アフターコロナのニューノーマル」。
オランダ社会でスーパーに期待が寄せられているのが「高齢者の孤独対策」。
世界で進むデジタル化や、新型コロナウイルスの影響もあって、コロナ感染症と同時に孤独が蔓延しています。
中でもお年寄りの心の負担は大きく、65歳以上の方は重症化の可能性が高いことから、外出自粛が強く進められ、人に会おうにも「万が一、コロナを移してはいけない」と周りの人から接触を敬遠されがち。
特に75歳以上の高齢者が130万人もいるオランダでは、政府主導で防止政策に乗り出しているのですが、これまで社会的なつながりをつくる役目を果たしてきた公民館などでの集まりも、密回避の為に機会を奪われ、孤独が止まりません。
孤独は心臓病や脳卒中、認知症の発生率を高め、うつ病や不安症の原因になるという。
人との接触を減らすことで命は守られても、孤独が心に巣食い、健康を害してしまうのです。
そこでスーパーを「地域の交流の場」として捉え孤独を防ぐことを目的に作られたのがJumboのレジ。
ほぼすべての人にとって必要な物資である食料を販売するスーパーは、個人と社会をつなぐ重要なインターフェイス。
そんなスーパーは、様々な人に「居場所」を提供する役割が求められています。
ただ買い物をする場所ではなく、スーパーの新しい社会的価値を提供。
同じ高齢化社会の日本でも参考になり、デジタルとは真逆を行くアイデアが求められるところです。
お店側にもメリットがいっぱい
世間話できることで他のスーパーマーケットと差別化で買い物客がユンボを選ぶ理由に。
また支払いなどに手間取りがちな高齢者が焦る必要がなく安心な店舗になる。
レジでのコミュニケーションで得た顧客の生の声が、お店の改善につながる可能性。